羽のように舞い上がって

わたしは自分の手鏡を取った。


お母さんの言う通り、わたしの顔は真っ赤だ。


なんで、こんなに赤いんだろう。そういえば、心臓もうるさいくらいに鳴っている。


分からない。
全然分からない。


落ち着け、落ち着け。


心の中で、わたしは自分に言い聞かせた。



「あぁー! んもう!」



全然落ち着きを取り戻せない。クールダウンの時間が欲しいのに。


わたしは、ベッドの上にあるパステルピンクのハート形のクッションを抱きしめて横になった。
そのままクッションに顔を埋める。


なんで、こんなに顔が熱いの。
なんで、こんなにドキドキするの。



「すー、はあー。すー、はあー」



仰向けになって、深呼吸を繰り返してみる。



「全く。さっきから何やってるのよ。深呼吸、聞こえてるわよ」



再び部屋に入ってきたお母さんが、苦笑いしながら聞いた。



「なんか……」



そう聞かれても、分からないものは答えられないよ。



「ちょっといらっしゃい」



言おうとしたけれど、お母さんはわたしの返事を待たないで、それだけ言った。
< 5 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop