羽のように舞い上がって

「ほら、飲みなさい」



リビングに、わたしを連れたお母さんは、緑茶を渡してきた。



「苦すぎないようにしたから、大丈夫。緑茶は、落ち着くのよ。冷たくならないうちに飲みなさい」



わたしは一口飲んだ。
お母さんの言った通りに、あまり苦くない。


わたしが苦いものは、嫌いだということを、お母さんはよく知っている。


お茶が苦さ控えめだということを知って安心したわたしは、三口くらい飲んで、湯呑みをテーブルに置いた。



「どう? ちょっと落ち着いた?」



お母さんの問いに、わたしは無言で頷いた。



「学校で何があったのか知らないけれど、お母さんに言えることなら、言って?」



「……大丈夫」



もう考えるのは、やめよう。
わたしは、別に恋なんて興味がない。彼氏なんて、わたしに出来る訳がないんだから。


緑茶で、身体が少しあたたまったように感じだけれど、少し震えたのが分かった。



「そう? あんまり1人で抱え込まないでよ? 分かった?」



「うん」



わたしは、緑茶の残りを飲みきってから湯呑みを台所に置いて、また部屋に戻った。
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