羽のように舞い上がって

「ちょっとでいいんだよ。待って」



後ろから勢いよく引っ張られて、わたしはバランスを崩して転んだ。


ああ、本当に嫌だ。



「あっ! やばい!」



今日の分のマシュマロが入った袋が落ちた。そういえば、鞄が半開きになっていたんだった。


輪ゴムで袋をとめてあるから、マシュマロ自体が落ちなかったのは、いいものの、彼をはじめ、周りの人達に見られちゃったじゃん。



「マシュマロだ。君、マシュマロ好きなの?」



「好きですよ」



「ねぇ、俺に少し頂戴」



「ちょっとだけですよ?」



わたしは輪ゴムを外して、マシュマロの袋を彼に渡した。



「ありがとう。美味しいね。俺のおすすめのマシュマロ、紹介しよっか?」



「いいんですか!?」



知らない間に、わたしの口の端は上がっていて、目を大きく見開いて彼を見ていた。


いかんいかん! ペースに巻き込まれないようにしないと。



「もちろん!」



「べ、別にいいです! それと昨日のことなんですけど、わたしはあなたに話しかけられたかった訳ではありませんから」



わたしは、マシュマロの袋をさっさとしまってから、自分の教室へと走った。
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