羽のように舞い上がって
教室へ行くだけで、こんなに大変な思いをするのは、初めてだ。
彩乃が、わたしの姿を見つけると、さっきのわたしと同じくらい目を見開いて(いたと思う)、
「真子、すごい汗だね。そんなに暑かったの?」
と言った。
「ま、まぁね」
本当は、汗をびっしょりかく程、暑かった訳じゃない。
色々とあったのだ。
彩乃にあまり心配をかけないほうが、いいよね。
「ううん。わたし、大丈夫!」
「本当に? 具合悪くなったら、保健室行くんだよ?」
「うん! でも、今は保健室行くほどじゃないから!」
まだ心配していそうな彩乃の、わたしはバッグからマシュマロの袋を出し、取って食べた。
「こうやって、マシュマロを食べる元気だってあるから、全然平気!」
にこっと笑って、わたしは彩乃に向かって親指と人差し指で丸を作った。
「いつも通り、マシュマロ大好きな真子に大した変わりは無さそうね」
彩乃が小さく笑ってくれたので、わたしはホッとしてマシュマロの袋をしまった。