彼の愛した女(ひと)は?

「今度の休みに、彼女お墓に一緒に行ってくれないか? 」

「なんで私が? 」

「だってちゃんと報告したいから。もう一度、心から愛したい人が現れた事」

「だ、だって私は三ヶ月だけの彼女ですから・・・」

 
 グイッと静流は柊の顎を取った。


「三ヶ月だけなんて、俺は言っていない。三ヶ月過ぎて、気持ちが向かないならあきらめると言っただけだ」

 そう言う静流は、とても真剣な目で柊を見つめている。


「どうしたら、俺のこの気持ちは君に伝わるんだ? 」

「どうしたらって・・・」

「言葉じゃ伝わらない? 」

 スッと静流の顔が近づいてきて、柊はドキッと赤くなった。

 そのままゆっくりと静流の顔が近づいてきた。


 ドキドキとして、柊は固まってしまった。


 息が頬にかかると何も考えられなくなった柊。


 気づいたら、静流の唇が重なっていた。

 驚くばかりで、柊はどうしたらいいのか判らず。

 そっと目を閉じるだけだった。



 唇が離れると、静流は優しい眼差しで柊を見つめた。

「なんか・・・胸がいっぱいになって・・・」


 目頭を押さえる静流。

 そんな静流を見ると、柊も目が潤んできた。



「キスして泣けるなんて・・・ごめん・・・」


 柊は素直に嬉しかった。

 こんな私にキスしてくれるなんて・・・。

 そう思う中、どうしても罪悪感を感じずにはいられない柊は俯いてしまった。


「今度の休み、楽しみにしているよ。お墓に一緒に行ってほしいなんて言ったけど、それだけじゃなく。どこか出かけたいんだ。沢山、一緒に思い出を作りたいから」


 私と思い出を作りたいなんて。

 そう言えばデートなんて、私したことなかった。


 キスされた唇にそっと触れて、柊は少しだけ口元で笑った。




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