彼の愛した女(ひと)は?
3章
それから一週間後。
柊の休みに合わせて、静流も仕事を調整して休みにした。
約束通り零のお墓に一緒に来た静流と柊。
手を合わせて、静流は柊の事を零に報告した。
柊もそっと手を合わせた。
「あら? 静流さん、また来てくれたの? 」
現れたのは玲子。
「もういいって言ったじゃない。ほんと優しいのね、静流さんは」
「いや、今日は報告に来たんです。新しい彼女に出会えたので」
玲子は柊を見た。
「あれ? 」
玲子は柊の顔を覗き込んだ。
「貴女、前もここに来てくれたわよね? 確か、零のお墓にお花を供えてくれてたのを見たわ」
え? と、静流は柊を見た。
柊は黙って俯いた。
「零の事知っているの? 」
尋ねられると柊は答えに迷った。
「零のお友達? 」
「い、いいえ・・・人違いだと思います・・・」
「そう? とっても魅力的な人だったから、覚えていたのよ」
柊はそれ以上何も答えなかった。
静流もそれ以上は何も触れる事はせず、お参りを終えると約束通り柊をデートに誘った。
2人がやって来たのは光友水族館。
透き通る青い海のような場所で、色々な魚達が泳いでいるのを見ると心が癒されるようで嬉しくなる。
ペンギンもいてとても可愛い。
アザラシのショーもあって、とても上手に演技するアザラシを見ていると、いつもどこか悲しげな顔をしている柊も笑顔がこぼれた。
そんな柊を見ていると静流は嬉しくなる。
ショーを見ている柊の手を、静流はそっと握った。
え? と、驚いた顔をして柊は静流を見た。
その視線を感じた静流だったが、あえて気づかないふりをしてアザラシを見ているふりをした。
静流の手を離さなくてはいけないと、柊は思ったが何故か離せなかった。
握られた手がとても暖かくて、離したくなかったからだ。