彼の愛した女(ひと)は?
「東條・・・柊・・・」
ミルは内心、怒りが込みあがってきた気持ちで、変わらぬふりをして順子の話を聞いていた。
その後。
ミルは仕事が終わってから子供の迎えまでにまだ時間があった為、光友総合病院にやって来た。
病院の看護師に柊の事をそれとなく聞いたミルは、7年前に心臓移植を受けたのが柊であることが間違いない事を掴んだ。
そして、7年前に脳死した北郷零の事も突き止めたミルは、その北郷零が昔、静流と結婚の約束をした相手であることを知った。
面白い情報を掴んだと、ミルは不敵に笑っていた。
子供を迎えいに行って、ミルは実家に用があるからと言って子供を預けた後、事務所に戻ってきた。
「あれ、ミルさんどうしたんだい? 」
順子が訪ねるとミルはニコっと笑った。
「うん、ちょっと忘れ物しちゃったの」
笑って答えるミルだが、笑顔の下では何かを企んでいるようだった。
しばらくすると静流が外出から戻ってきた。
「あ、先生。今お帰りですか? 」
ミルはニコニコした笑顔で静流に歩み寄って行った。
「あれ? ミルさん、今日はどうしたの? 」
「ちょっと忘れ物取りに来たんです。それより先生お時間あります? 」
「え? どうかしたの? 」
「うん」
ミルは静流の耳元に近づいて。
「先生、今付き合っている人いますよね? その人の事でちょっと、耳に入れたい事があるんです」
「え? 」
「・・・その人。・・・東條柊さんですよね? 」
「どうして知っているんだ? 」
「知っていますよ」
ニヤリと口元で笑いを浮かべて、ミルは静流を見た。
「先生、その人とすぐに別れた方がいいですよ」
「はぁ? 何を言い出すんだ? 」
「だってその人。先生の恋人を、殺した人ですよ」
「はぁ? どうゆう事なんだ? 」
ミルはまたニコッと笑った。
「詳しく知りたいなら、ここじゃなくて場所を変えましょうよ。ここだと、順子さんも聞いているし。こんな話し、他の聞かれたらちょっとね・・・」
不敵に笑っているミル。
静流は驚く気持ちでいっぱいだったが、とりあえずミルの話を聞くために場所を変えた。