彼の愛した女(ひと)は?
ごく普通の都会・光友市(こうゆうし)。
せかせかと人々が行き交う街並み。
都会の中に一軒の豪邸が建っている。
白い外壁の広い二階建ての家で、庭も広い。
門構えも立派な家で表札に九条(くじょう)と書いてある。
そして隣には九条法律事務所と書いてある。
弁護士の名前は九条静流(くじょう・しずる)
門が開き一人の青年が出てきた。
背の高いスラッとしたクールな表情をしたイケメン。
紺色のスーツに黒い革靴に、黒い皮の鞄。
胸にバッジがついていて弁護士である証がついている。
歩く姿もかっこいい青年。
この青年が九条静流である。
都会の人込みを歩いてくる静流。
すると前方から、黒髪のショートヘヤーに眼鏡をかけた、ちょっと地味な感じの女性が歩いて来た。
ブルーのシャツに紺色のズボンに黒い靴の姿で、これと言って目立つことはない女性。
静流は何故かその女性が気になった。
女性は静流に気が付かないまま通り過ぎた。
この日はこのまま、何も変わりはなかった。
それから2週間後。
静流はいつものように仕事を終えて、事務所へ帰るところだった。
人通りが少ない住宅街。
車が通る通り。
歩行者信号が赤になり静流が立ち止まった。
だがその横を茫然と歩いてゆく女性がいた。
「あ! 危ないですよ! 」
気づいた静流が女性を引き止めた。
ハッとなる女性。
車が通りすぎるのを見ると、女性はハッと我を取り戻しバッグを落としてしまった。
中身がちらかり女性は慌てて拾った。
「ん? 」
静流は女性の顔を見てハッとなった。
女性は静流が気になった、あの時通り過ぎた女性だった。
「大丈夫ですか? 」
静流が声をかけると、女性はこくりと頷いた。