彼の愛した女(ひと)は?
「ごめんこんな夜遅くに。・・・え? 宿直? ・・・よかった休憩中で。いや、ただ・・・声が聞きたくて・・・。水族館楽しかった。またどこか行かないか? 今度は行きたい場所に連れて行くから・・・うん・・・」
柊と話していると、静流の目が潤んできた。
なんだか想いが溢れてきて、声を聞くと好きだと言うより愛していると言う気持ちが溢れてくる。
零が言った通り。
想いは言葉にしなくちゃ伝わらない。
声を聞けば伝わってくる。
相手の気持ち。
顔を見ればもっと感じる相手。
柊と電話をしていると、静流の中で絶対に柊の事を離したくないと強く思った。
「ごめん、仕事中なのに。・・・ねぇ、明日は時間ある? ・・・いつでもいいから、時間作れないか? ・・・会いたいんだ・・・」
静流の素直な気持ちは柊に届いていた。
病院の休憩室。
休憩の為、柊は眼鏡を外していた。
眼鏡を外した柊はとても可愛く、目がぱっちりしていて優しい感じがする。
静流から素直に「会いたいんだ」と言われた柊は目が潤んでいた。
「・・・明日は・・・夜にしか時間がなくて・・・翌日は、早くから手術があるので・・・今度の週末でも、いいですか? 」
少し涙ぐんだ声で、柊は答えた。
(分かった、週末空けておくから。楽しみにしている)
「はい・・・すみません、すぐに会えなくて・・・」
(気にするなよ、無理して会っても楽しくない。そうだろう? )
「はい・・・」
返事をした柊の頬に涙が伝った。
嬉しい素直に。
電話を切った柊はふと、カレンダーを見た。
気づけば静流と交際を始めて一ヶ月が過ぎようとしていた。
「あと二ヶ月だね。・・・二ヶ月したら・・・」
ふと、視線を落として悲しげな目をする柊は何かを決めているようだ。