彼の愛した女(ひと)は?
翌日。
柊は宿直を終えて一旦帰宅する為病院から出てきた。
眼鏡をかけて地味な服装の柊。
「東條柊さん」
名前を呼ばれて柊が振り向くと、そこにはミルが居た。
ミルは挑戦的な目で柊を見て歩み寄ってきた。
「貴女、九条先生に言い寄ているんでしょう? 」
「え? 」
「先生、とっても迷惑しているって言っていたわよ。この前も、無理やり誘われて水族館に連れて行かれたって言っていたわ」
水族館に行ったことを知っているなんて。
柊は驚いた目をした。
「なんで私が知っているかって思った? 」
ミルはニヤリと笑った。
「知っているわよ、九条先生の事ならなんでも。私、先生と付き合っているもの。娘を連れて、再婚するのよ」
え?
驚いて茫然となる柊を鼻で笑うミル。
「知らなかった? 先生何も話していなかったんだ。まぁ、無理やり貴女に誘われているだけだから、気持ちなんてないから話す必要ないって思ったのね」
驚いている柊だが、ショックを受けているようだ。
「ごめんなさいね、私。先生とはもう3年前から付き合っているの。元旦那の事を
相談していて、そうゆう流れになったんだけどね。残念ね、こればかりは・・・いくら大金を積んだって、どうしようもないわ」
大金?
その言葉に柊はどこか引っかかりを覚えた。
「とにかく、もう先生に近寄らないでくれる? 迷惑なの。先生、優しいから無理やりでも付き合ってくれるけど。見ていられないし」
「・・・分かりました。・・・」
柊は小さく答えた。