彼の愛した女(ひと)は?
それから更に1週間過ぎた。
静流は順子から聞いたことはミルには話していない。
ミルはいつも上機嫌で仕事をしている。
そんな中。
順子から聞いて、柊の父親が東條コンサルティングの社長であることを知って静流は会いに来た。
忙しい中、静流が柊の事を話すと時間を作ってくれた。
東條護(とうじょうまもる)。
現在60歳の護は、5年前に妻を亡くしている。
後継者は息子が1人いるが、現在は海外で修業をしている。
接客室に通された静流は、護を見て少し違和感を感じた。
親子なのに柊と似ていないと感じたのだ。
「今日はわざわざ来て頂いて、申し訳ございません」
「いえ、こちらこそお時間を作って頂き申し訳ございません」
「娘の柊の事ですね? あの子の事を、大切に思ってくれているご様子良く分ります。柊は・・・養女でして、昔から気を使っていて。大学も自分のお金で行くと言って、私には一切何もさせてくれなかったのです」
「養女とは、どうゆう事なんですか? 」
「私達夫婦に子供はいません。息子も養子です。妻が体が弱くて、子供が産めなくて施設から引き取ったのです。息子も娘も、小さい頃からとっても優しくて病気の妻の事を助けてくれていましたよ。本当の親子のように仲が良くて、いつも私に引き取ってくれて有難うと感謝してくれていました」
「そうだったんですか」
「柊は産まれつき心臓が弱くて、長生きできないと言われていたのですが。7年前に心臓移植が出来て、現在は元気に医師として頑張っています。命を救われたから、今度は自分が大勢の人を救いたいと言って。奨学金も返しながら頑張っているんです。そんな娘を陰から見守る事しか、私にはできません」