彼の愛した女(ひと)は?
目と目が合うと、綺麗な目をしている柊に、静流は胸がキュンとなった。
柊は驚いてただ、静流を見ていた。
「全部聞いたって、メールしただろう? 」
「はい・・・見ました・・・」
「俺の気持ちは全く変わっていない。それよりも、前よりずっと好きになった。この会えない時間が、ずっと苦しくて。声も聞けなくて、辛かった。零の時のように、永遠に会えなくなってしまうかもしれないって、怖かったよ」
「・・・私は・・・貴方の大切な人の、命を奪いました。・・・その事は、一生変わらないと思っています。脳死だと判断されては、意識を取り戻すことはないと言われます。でも例外で、何年か後に目を覚ました人もいると言われているケースもあります。心臓さえあれば、貴方の大切な人が・・・いなくなることも、なかったのだと思いました。だから、貴方の大切な人を殺したと言われても否定はできないと・・・」
涙が溢れそうになり、柊はグッと言葉を呑んだ。
そんな柊を静流はそっと抱きしめた。
「何言っているんだよ。殺してなんかいないだろ? 君は、零の命を受け継いでくれただけだよ」
抱きしめてくれる静流の腕の中で、少しだけ早い鼓動を感じた柊。
全速力で追いかけてきた静流。
運転手に誰かが追いかけてきていると言われて、柊は振り向いた。
走って追いかけてくる静流の姿が見えて、柊は驚いて、そのまま気づかないふりをして去ってゆこうと思ったが。
その時、心臓がズキンと痛んだ。
まるで止まって! と言っているかのようだった。
その痛みを感じて、柊は車を止めて降りてきたのだ。