彼の愛した女(ひと)は?

 柊の部屋は、静流の部屋の隣り。

「もう寝たかな? 」

 隣の部屋を見つめた静流。

 
 ベッドに横になるが何故か眠れなくて。


 場所が違うせいかと思ったが。

 胸がドキドキしているのを感じた。


 少し落ち着くため、静流はトイレにでも行こうと部屋を出た。


 
 柊の部屋の前を通ると灯りが漏れていた。

「あれ? まだ起きているんだ」


 部屋の灯りを気にしながら静流はトイレに向かった。


 用を済ませて戻ってくると、また柊の部屋の灯りはついていた。



 そのまま通り過ぎようとした静流だが・・・

 
 部屋の前で立ち止まった静流は、呼吸を整えて小さくノックした。


 そっとドアが開いた。


 パジャマ姿の柊を見ると、静流はドキっとした。


「ごめん・・・入っていい? 」

「はい・・・」


 招き入れられた柊の部屋はシンプルで、本棚と机、クローゼット、そして可愛い花柄の布団カバーがかけられているベッドが窓際に置いてある。


「もしかして、仕事していたのか? 」

「はい。でも、もう終わりました」

「それじゃあ、もう寝るところだったか? 」

「はい・・・」


 そっと、静流は柊を抱きしめた。


「・・・初めての場所で、緊張しちゃって眠れないんだ。一緒に、寝てもいいか? 」

 静流の腕の中で、柊は赤くなった。

 答える代わりにそっと頷く柊。



 灯りを消して、同じベッドで寝る静流と柊。


 何かを話すべきか。

 このまま寝てしまうのは嫌だと思いながら。

 でも触れてはいけないような気にもなって。


 これでは余計眠れない。


 しばらく沈黙が続いたが。

 そっと、静流の手が柊の手に触れた。

 ドキッとして目を開ける柊。
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