彼の愛した女(ひと)は?
「ねぇ柊。俺と、結婚してくれるかい? 」
え? 突然のプロポーズ?
こんな夜更けに?
「あ・・・あの・・・。私、貴方より年上だし、綺麗じゃないし、暗いし・・・」
「前にも言ったけど。歳なんて気にしてないよ。年上って言っても、2歳しか変わらないじゃないか」
「でも・・・私なんて、貴方に不釣り合いじゃ・・・」
柊の言葉を遮るように、静流はギュッと抱きしめた。
「これだけ答えてくれ。柊は、俺の事。好きか嫌いかどっちだ? 」
「そ、それは・・・」
ギュッと強く抱きしめられて、柊は静流の鼓動を感じた。
すごくドキドキしている。
落ち着いているようで、内心は緊張しているんだ。
その鼓動を感じると、柊はギュッと静流に抱きついた。
「好きです。・・・もう・・・16年前からずっと・・・」
「え? そんな前から? 俺の事、知っていたのか? 」
「はい。もう忘れられていると、ずっと思っていました。まだ私が、孤児院にいた時です。近くのアパートに貴方が住んでいて、お父さんもお母さんも働いているからって、よく孤児院に来て遊具で遊んでいました。私はお姉さんだけど、貴方は一緒に遊んでくれて。いつも、ミルクの飴を持って来てくれて。みんなで一緒に食べるのが、楽しみだったんです。でもいつの日か、貴方は引っ越してしまって。先生から家を建てて引っ越したって、聞いて。もう二度と会えないって、諦めていました」
話を聞いていると、静流はぼんやりと思いだした。
小さい頃住んでいたアパートの傍に孤児院があった事を。
そこで一緒に遊んでいた可愛い年上の女の子がいた事。