彼の愛した女(ひと)は?

「そっか。どこかで会った事があるって思ったのは、それだったんだ。ごめん、忘れていて」

「いいえ、小さい頃の事なんてみんな忘れてしまいますから。でも、16年もたってまさか貴方に出会うなんて、思ってもみませんでした。信号待ちで助けてもらって、病院に来てくれた時は心臓が止まりそうだったんです。貴方の事は、雑誌で見たことがあって弁護士さんになった事は知っていました。そして、私に心臓をくれた零さんの恋人だったことも・・・」

「ひょっとして、16年ずっと俺の事を想っていてくれたのか? 」

 尋ねらると柊は赤くなった。

「・・・はい・・・」

 小さく答える柊。

 信じられないくらい、静流は感動した。

 そんな小さなときの記憶なんて、消えてもおかしくないのに。

 ずっと想っていてくれたなんて。



 感動の気持ちが溢れてきて、静流はそのまま柊の唇にキスをした。

 驚く柊だが、ぎゅっと静流にしがみ付いた。


 深くて溶けそうなキスを繰り返されて。

 頑なだった柊の力もふっと抜けた。


 キスが深くなり、ゆっくりとパジャマのボタンが外されてゆく・・・。


 
 パジャマのボタンが外れると、柊の体には移植した手術の跡が残っていた。

 その跡を見ると、静流はもっと柊を愛しく感じた。

 柊の体に優しい静流の唇が滑り落ちてくる・・・。

 手術の傷跡に静流の唇が触れると、柊の体が大きく反応した。


「柊。大丈夫だよ、この傷も全部愛しているから」

 優しい静流の声が嬉しくて、柊はギュッと抱き着いた。


「愛しているよ、柊」

「私も・・・愛しています・・・」

「じゃあ、俺の名前呼んで。まだ、一度も呼んでもらっていないから」


 熱い目で見つめられ、柊は少し赤くなった。


「・・・静流さん・・・」

 名前を呼ぶと、柊の目から涙が溢れてきた。


 細くて長い静流の指先が、柊の体に優しく触れてゆくを感じる・・・



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