彼の愛した女(ひと)は?
「あんたが・・・あんたがいなければ、私は・・・」

 怒りが込みあがったミルは、柊にとびかかり首を絞め始めた。

「っ・・・」

 苦しむ柊を見て、ミルはニヤリと笑た。

「よせ! 何するんだ! 」

 間に入る静流を突き飛ばして、ミルは柊の首を絞め続けた。

 ふと、柊のブラウスの襟元から鎖骨についているキスマークが目に入ったミル。


「アンタなんか死ね! 」


 キスマークを見るとミルは首をしめている手に力が入った。


「やめろ! いい加減にしないか! 」


 怒りで我を忘れているミルを、静流は突き飛ばした。


「ゴホッ・・・ゴホッ・・・」


 急に空気が入り柊はむせ込んだ。

「大丈夫か? 」


 静流はそっと、柊の背中をさすった。


「なんで? なんで、私だけ不幸になるの? みんな、私から奪うだけ奪って・・・酷いじゃない・・・」

 突き飛ばされたミルは泣き出してしまった。


「あの・・・貴女は不幸じゃないと、思いますよ・・・」

 ミルは柊を睨んだ。

 アンタに何が判るの? と・・・。


「貴女には可愛いお子様がいらっしゃるじゃないですか」

「子供? 」

「はい。大切な家族ですよね? 」

「家族・・・」


「私、東條家に養女に来たんです。実の父は私が産まれる前に事故で亡くなって。母は私が産まれて無理を重ねてしまって、病気になって。私が2歳の時亡くなりました。身寄りがなくて、私は施設に預けられて。そこに来ていた東條さん夫妻が、私の事を気に入ってくれて養女として迎えてくれたのです」

「あんた、養女だったの? 」
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