彼の愛した女(ひと)は?
2章
それから。
3ヶ月の交際を約束した静流と柊は、携帯番号を交換した。
メールアドレスも交換して、電話でもメールでも連絡が取れるようにした。
医師である柊は、いつも病院から連絡が入ってもいいように仕事用の電話も別に持っている。
あの公園から別れた後、それぞれの家に帰った静流と柊。
帰宅した静流は残務をこなしながら、柊にメールを送った。
出会ってくれて嬉し事や無理をしないでと、柊を労わる言葉を沢山送ってくれる静流。
だが柊はあまり返信してこない。
ありがとうなどの一言だけ返すくらいだった。
柊との交際がスタートして1週間後。
静流は母のいる療養施設へとやって来た。
父が病で亡くなりもう10年。
母は体を悪くしてずっと療養施設に入っている。
全てが整っている療養施設は割と高額で、いくら弁護士で静流が稼いでいてもギリギリなくらいだった。
父が残した資産はあるがお金はもう底を尽きようとしていた。
そんな時だった。
静流が母のお見舞いにやってくると、事務員がニコニコと喋りかけてきた。
「九条さん、先日の入金無事に確認できましたって事務長が言っていました」
「え? 」
静流は支払った覚えがなく驚いた顔をしていた。
「はい、領収書です」
支払い覚えがないのにどうゆう事なんだろうと思った静流だが、事務から言われるのであれば間違いないのだろうと思った。
だが、母の病室に行くと静流はまた驚いた。
「まぁ静流、有難うね。新しいパジャマ買ってくれて」
静流の母・静華(しずか)が真新しいパジャマを着ていた。
「え? 俺はそんなの買っていないよ」
「静流が買ってくれたんだって、事務所の人が持ってきたのよ。他にも靴や、膝かけもあるわよ」
どうゆう事か静流は分からなかった。
だが、これだけではなく他にも不思議な事があった。