塩分過多の海原くん



「えぇ、そんなの無理だよ。私は気づいたら、海原くんのことばっかり考えてるもん」



「……は?」



一瞬。ほんとに一瞬だけ。



海原くんの表情が、崩れた。



完璧冷淡。無表情。……が、まさかの崩壊。



口元が少し緩んで、たまに白い歯がみえる。



瞳が左右に揺れる。



「動揺……?」



「うるさい口だね」



今日の海原くんは、よく、しゃべる。



……と。



「塞いであげよーか?」



カタ、と。



海原くんが、静かに立ち上がった。



静かだけれど、たしかに音はなっていて。



私の心のなかの、なにかが動いたこと。私の心臓が、なにかに溺れたこと。



それを確実に、示したみたいで。



「……ち、近いよ、海原くん……」
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