クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「和生殿、汗が・・・」

和生がスープの最後の一滴を啜り終わると、愛菓がポケットからハンカチを出して、和生の額と首筋を拭った。

「イケメンの汗ってだけで、清潔な感じがするのはなぜでしょうね?」

うっとりと見上げる愛菓も汗が滴り、悩ましい感じだ。

「愛菓さんの色気にはかないませんよ」

そう言って、今度は和生が取り出したハンカチで愛菓の汗を拭う。

「こらこら親父の目の前でイチャつくんじゃねえよ。愛菓のこんな姿、白人が見たら泣くぞ」

親父の発言に、ピクリと和生の片眉が上がる。

「白人さんもここに来たことが?」

「ああ、あいつが15歳のころから来てるよ。常連だし、愛菓の熱狂的な弟子だからな」

和生は顔をしかめているが、親父は愛菓が差し戻してきた空のラーメン鉢を見て

「おめえ、相当な辛党だな。このスープを飲み切る奴は、愛菓かここの従業員しかいねえ」

と感嘆の声をあげた。

「少しは見込みがありますか?」

「なんの見込みだよ?うちの常連になれる見込みならあるな」

と親父は笑った。
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