クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「ごちそうさまでした」

「おう、また来いよ。激辛担々麺の上の超激辛担々麺もあるからよ」

担々麺を食べ終えた和生と愛菓は、早々に席を立った。

店内は、一次会を終えても食べたりなかった客や、仕事帰りのサラリーマンで溢れ帰っていた。

店の外で待っている客もおり、食べ終わった客は早々に去るのがラーメン店での礼儀だ。

愛菓の父親もずっと二人の相手をしているわけにはいかず、常に手を動かしていた。

暖簾を潜って外に出ると、少し肌寒い風が頬に心地よかった。

「この後は、私が決めても?」

「ええ、食事はお付き合い頂いたんですから、飲みには私が付き合います」

少し古びたラーメン店からクールな美男美女が現れて、店先で入店待ちをしていた中年男女が驚いて二度見してきた。

しかし、冷えきった表情の和生と視線が重なると、慌てて目を反らした。

「席が二つ空きましたよ。どうぞお入りになられては?」

「は、はい。ご丁寧にどうも・・・」

「では、行きましょう。愛菓さん」

とてもラブラブには見えない二人の関係性を気にしている中年男女を脇目に、今度は和生が愛菓の手を引いて、グングンと歩き出した。


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