クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
辛麺とスイーツと侍と
「大人な雰囲気のお店ですね。さすがセレブでらっしゃる。和生殿」
薄暗い店内は、ジャズが流れ、明治時代のようなレトロモダンな雰囲気で統一されていた。
「愛菓さんの、その侍のような話し方の理由が、今日お父様のお店に伺ってわかったような気がしました」
この落ち着いた雰囲気と違い、愛菓の父親が営むラーメン店は江戸の幕末のような雰囲気だった。
壁には新撰組や歴代の将軍の似顔絵や写真が貼られ、武将の名をもらったラーメンの名前もあった。
「小学2年生のころから週末には、お店に出入りするように言われました。当然辛麺も当たり前に食べされられ、店休日には、滋賀や大阪、四国、江戸の博物館で歴史巡りをさせられたものです」
愛菓はお酒が強いのだろう。
レディキラーと呼ばれるカクテルスクリュードライバーやロングアイランドアイスティ、などを迷いもなく次々と頼んでいる。
「愛菓さんが辛いもの好きとは意外でした」
「好きではありませんよ。あそこで食べるなら激辛担々麺というだけで。和生殿が辛党なのは想像通りでしたね」
クールな表情が少し和らいで、いつもより饒舌な愛菓が可愛らしい。
「父上のお陰でしょうね。男臭い環境への反発からか、甘いものや可愛いものが好きになり、中学生の時に le sucreのオーナーと出会い、パティシエールになりました」
フフフと笑う愛菓はとてもレアだ。
「和生殿、私、忍者検定上級、歴史能力検定一級なんですよ。高校生の時に父上に受験させられて」
なんと、忍者検定初級には、筆記試験に加え、コスプレ加点、手裏剣や吹き矢などの実技加点があるそうだ。
中級では巻物がもらえるらしく、認定証を持っていれば忍者と認められるのだそうだ。
「忍者パティシエールなんて斬新ですね。それで売り出しますか?」
「やめてください。冗談が過ぎます、和生殿」
ニコニコと笑顔を浮かべ始めた愛菓は、絡み酒とは言えないものの、笑い酒という楽しい飲み方をするようだ。
「マスター、アレキサンダーお願い~」
上目遣いで笑顔を見せて頼む愛菓に、ロマンスグレーの寡黙なマスターも頬をほんのり染めている。
周りの男性客も、チラチラとこちらに視線を向けていて和生は腹立たしい。
「愛菓さん、初めから強いお酒を頼みすぎですよ。小休止いれましょうか」
そう言って、愛菓の肩を自分の方に引き寄せると、周囲の男性に冷たい視線を送りつつ、マスターにはウーロン茶を頼んだ。
「おや、おや、樫原さんはこんなに可愛らしいお嬢さんを隠していたとは。通りで言い寄ってくる女性に見向きもしないはずだ」
マスターの言葉に、愛菓がトロンとした目を向け
「私と和生殿は、そんなんじゃ・・・」
と否定しようとしたのを
「ええ、可愛らしいでしょう。誰にも渡しませんよ」
と、素早く和生が遮った。
「もう、和生殿~」
ニコニコ笑い続ける愛菓は、もう、それだけで男を惑わす凶器だった・・・。
薄暗い店内は、ジャズが流れ、明治時代のようなレトロモダンな雰囲気で統一されていた。
「愛菓さんの、その侍のような話し方の理由が、今日お父様のお店に伺ってわかったような気がしました」
この落ち着いた雰囲気と違い、愛菓の父親が営むラーメン店は江戸の幕末のような雰囲気だった。
壁には新撰組や歴代の将軍の似顔絵や写真が貼られ、武将の名をもらったラーメンの名前もあった。
「小学2年生のころから週末には、お店に出入りするように言われました。当然辛麺も当たり前に食べされられ、店休日には、滋賀や大阪、四国、江戸の博物館で歴史巡りをさせられたものです」
愛菓はお酒が強いのだろう。
レディキラーと呼ばれるカクテルスクリュードライバーやロングアイランドアイスティ、などを迷いもなく次々と頼んでいる。
「愛菓さんが辛いもの好きとは意外でした」
「好きではありませんよ。あそこで食べるなら激辛担々麺というだけで。和生殿が辛党なのは想像通りでしたね」
クールな表情が少し和らいで、いつもより饒舌な愛菓が可愛らしい。
「父上のお陰でしょうね。男臭い環境への反発からか、甘いものや可愛いものが好きになり、中学生の時に le sucreのオーナーと出会い、パティシエールになりました」
フフフと笑う愛菓はとてもレアだ。
「和生殿、私、忍者検定上級、歴史能力検定一級なんですよ。高校生の時に父上に受験させられて」
なんと、忍者検定初級には、筆記試験に加え、コスプレ加点、手裏剣や吹き矢などの実技加点があるそうだ。
中級では巻物がもらえるらしく、認定証を持っていれば忍者と認められるのだそうだ。
「忍者パティシエールなんて斬新ですね。それで売り出しますか?」
「やめてください。冗談が過ぎます、和生殿」
ニコニコと笑顔を浮かべ始めた愛菓は、絡み酒とは言えないものの、笑い酒という楽しい飲み方をするようだ。
「マスター、アレキサンダーお願い~」
上目遣いで笑顔を見せて頼む愛菓に、ロマンスグレーの寡黙なマスターも頬をほんのり染めている。
周りの男性客も、チラチラとこちらに視線を向けていて和生は腹立たしい。
「愛菓さん、初めから強いお酒を頼みすぎですよ。小休止いれましょうか」
そう言って、愛菓の肩を自分の方に引き寄せると、周囲の男性に冷たい視線を送りつつ、マスターにはウーロン茶を頼んだ。
「おや、おや、樫原さんはこんなに可愛らしいお嬢さんを隠していたとは。通りで言い寄ってくる女性に見向きもしないはずだ」
マスターの言葉に、愛菓がトロンとした目を向け
「私と和生殿は、そんなんじゃ・・・」
と否定しようとしたのを
「ええ、可愛らしいでしょう。誰にも渡しませんよ」
と、素早く和生が遮った。
「もう、和生殿~」
ニコニコ笑い続ける愛菓は、もう、それだけで男を惑わす凶器だった・・・。