クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
だからこそ、弱味を持っている人や、まっずくに向けられる好意には弱く、相手が誰であろうと、その思いに応えたくなってしまうのだろう。

美しくて、逞しくて、繊細とは程遠く見える・・・。

そんな和生が、どんな形であれ、自分を求め、弱味を見せつけてくる。

彼に堕ちるのは簡単だった。

過去、唯一の彼氏である佐藤優吾は、優しくて大人で、尊敬できる師匠で、ライバルだった。

優吾には隙がない。

だからこそ、愛菓と優吾は恋人としてはうまくはいかなかった。

本当は付き合って半年ぐらいで別れたが、お互いにいい寄ってくる輩から身を守るために彼氏彼女を装っていた。

男女の関係だって初めのうちだけでほんの数回だけ。

それなのに、優吾が本当に愛した美佳には、恋人同士と偽装した期間の長さが仇となり、いまだに苦しめる結果となっている。

優吾とわかれてからは、スイーツ作りに没頭していたため恋人はできなかった。

「それにしても、和生殿はやはり素敵だったな」

愛菓は、ムックリと起き上がると、長い髪をかき揚げて

「帰ろ」

と、綺麗に畳んであった衣類を身に付けると、洗面所に向かって歩いていった。
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