クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「完敗だよ。愛菓。邪念や欲ばかりの僕では、純粋な愛菓に勝てるはずはない。アレクサンドル皇子のご両親に呆れられたに違いない」

マサキヨシザキの゛お菓子の家゛も好評で、とてもグルテンフリー、ミルクフリーとは思えない美味しさだった。

特別審査員と一般審査員の試食が終わり、結果を待つ間、残ったスイーツを参加者5人で試食することができた。

「さすが、カスタードの魔術師です。3種類のどれをとっても抜群の美味しさで、客を飽きさせません」

吉崎以外のパティシエも、愛菓のスイーツには大絶賛だった。

しかし、愛菓は、吉崎の作った゛お菓子の家゛のテイストには脱帽だった。

数日前、愛菓のレシピを再現した時とは、数段に腕が上がっている。

相当に研究、改善を重ねたに違いない。

日本中のパティスリーを巡って、味を研究するその探求心は、愛菓にも真似できない。

「いえ、マサキヨシザキのお菓子の家も完璧です。押領司さんもバルベーリさんもミケルセンさんのスイーツもまた食べたくなる美味しさです」

愛菓はお世辞ではなく、本心から熱く語った。

お菓子の好みは人それぞれ。

一流の製菓の達人たちが招かれているのだから、誰が勝ってもおかしくない状況。

結果は、このオークフィールドホテルの樫原社長に託された。

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