クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「続いて二位・・・」

正孝の声も心なしか興奮している。

そんな中、愛菓の心は凪いでいた。

どちらに転んでも、愛菓はフランスには行かない。゛favori crème pâtissière゛も辞める。

「二位は・・・フランス代表、マサキヨシザキ。メディア投票得点40点、特別審査員投票得点30点、一般審査員得点20点、合計90点」

吉崎は苦笑しながらも、出された結果には納得している様子で、ステージに向かう姿は晴れ晴れとしていた。

吉崎が二位とはいえ、愛菓が一位とは限らない。

他の2名と比べ、愛菓のクロカンブッシュとマカロンタワーは地味と言えば地味だ。

大どんでん返しだってあり得る。

最後まで、結果はわからない。

愛菓は、焼け野原に佇む侍のように、真っ直ぐに姿勢正しくコックタイを右手に掴んで正面を見ていた。

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