クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「さあ、何で会場に最後までいなかったのか、本当の理由を聞かせて欲しい」
ソファに強制的に腰かけさせられた愛菓は、隣に座る和生に真横から見つめられて恐縮していた。
「大切な人とあのスイーツを食べろと言ったのは愛菓、君だろう?」
今まで゛愛菓さん゛と呼んでいたのに、いつの間にか呼び捨てになり、敬語でもなくなっている。
それだけ怒り狂っているのかと、愛菓は少し恐ろしくなったが、やはり、表情には出ない。
「食べて頂けなかったのですか?」
「君がいないのに成り立つわけないだろう」
アリスとの幸せな瞬間を、愛菓に見届けてほしかったのだろうか。
愛菓は悲しくなって、涙をうっすらと浮かべた。
「どうした?何故泣くんだ」
オロオロとする和生はスーパーレアだが、愛菓は構ってあげる余裕はない。
「私が厳しく責め立てたからですか?それとも呼び捨てが気に入りませんでしたか?」
的外れな和生の言動に、愛菓は泣き笑いになる。
「それは・・・、嬉しかったです」
頬を染めながら笑って泣く愛菓に、和生の胸がキュンと鳴る。
「それなら、どうして・・・」
「アリスさんと、和生が仲良くケーキを食べるところなんて、見たくなかった・・・だけです」
「アリス・・・ですか?」
コクン、と頷く愛菓を和生が全く意味がわからない、という目で見つめている。
「そもそも、アリスとは、どなたのことを言っているのですか?」
「アレクサンドラ皇子のお姉さまですよ。大会の間中、和生殿の隣にいた・・・」
「ああ、あのよく喋る、フランス人形のような皇女ですね。初めて名前を知りました」
和生の言葉に、愛菓が驚きで目を見開いている。
ポロポロとこぼれ落ちた涙は、驚きで止まってしまったようだ。
「アリスは和生の婚約者だと聞きました。婚約の話は断ることはできず、私の存在が、アリス皇女の心を傷つけることになると・・・」
「誰がそんなことを?」
「マサキヨシザキの側近、ルイです」
「あの野郎・・・」
和生から漏れた野蛮な言葉に愛菓が驚いていると、
「愛菓さん、そんな事実は一切ありません。おそらく、愛菓さんをヨシザキ氏との勝負の前に、あなたを動揺させる作戦だったのでしょう」
和生の言葉に動揺しながらも、婚約が事実ではないことに愛菓はホッとしていた。
アリスが和生のことを想っていないのなら、愛菓の存在が彼女のことを傷つけることはないし、大切な゛favori crème pâtissièr゛を愛菓が去らなければならない理由はないからだ。
「で、でも、アリスさんは゛私の大切なカズ゛と何度も私に言いました」
和生は、愛菓の言葉を聞いて、クスッと笑った。
「愛菓はやきもちを妬いたのですね」
「やきもち?」
「そう、その感情がやきもちだ」
ソファに強制的に腰かけさせられた愛菓は、隣に座る和生に真横から見つめられて恐縮していた。
「大切な人とあのスイーツを食べろと言ったのは愛菓、君だろう?」
今まで゛愛菓さん゛と呼んでいたのに、いつの間にか呼び捨てになり、敬語でもなくなっている。
それだけ怒り狂っているのかと、愛菓は少し恐ろしくなったが、やはり、表情には出ない。
「食べて頂けなかったのですか?」
「君がいないのに成り立つわけないだろう」
アリスとの幸せな瞬間を、愛菓に見届けてほしかったのだろうか。
愛菓は悲しくなって、涙をうっすらと浮かべた。
「どうした?何故泣くんだ」
オロオロとする和生はスーパーレアだが、愛菓は構ってあげる余裕はない。
「私が厳しく責め立てたからですか?それとも呼び捨てが気に入りませんでしたか?」
的外れな和生の言動に、愛菓は泣き笑いになる。
「それは・・・、嬉しかったです」
頬を染めながら笑って泣く愛菓に、和生の胸がキュンと鳴る。
「それなら、どうして・・・」
「アリスさんと、和生が仲良くケーキを食べるところなんて、見たくなかった・・・だけです」
「アリス・・・ですか?」
コクン、と頷く愛菓を和生が全く意味がわからない、という目で見つめている。
「そもそも、アリスとは、どなたのことを言っているのですか?」
「アレクサンドラ皇子のお姉さまですよ。大会の間中、和生殿の隣にいた・・・」
「ああ、あのよく喋る、フランス人形のような皇女ですね。初めて名前を知りました」
和生の言葉に、愛菓が驚きで目を見開いている。
ポロポロとこぼれ落ちた涙は、驚きで止まってしまったようだ。
「アリスは和生の婚約者だと聞きました。婚約の話は断ることはできず、私の存在が、アリス皇女の心を傷つけることになると・・・」
「誰がそんなことを?」
「マサキヨシザキの側近、ルイです」
「あの野郎・・・」
和生から漏れた野蛮な言葉に愛菓が驚いていると、
「愛菓さん、そんな事実は一切ありません。おそらく、愛菓さんをヨシザキ氏との勝負の前に、あなたを動揺させる作戦だったのでしょう」
和生の言葉に動揺しながらも、婚約が事実ではないことに愛菓はホッとしていた。
アリスが和生のことを想っていないのなら、愛菓の存在が彼女のことを傷つけることはないし、大切な゛favori crème pâtissièr゛を愛菓が去らなければならない理由はないからだ。
「で、でも、アリスさんは゛私の大切なカズ゛と何度も私に言いました」
和生は、愛菓の言葉を聞いて、クスッと笑った。
「愛菓はやきもちを妬いたのですね」
「やきもち?」
「そう、その感情がやきもちだ」