クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
エピローグ
「本当に申し訳ありませんでした。すべては私の独断でやったことです。どんな処罰でも受けます。どうか、マサキにだけはご容赦を」
翌日、和生と共にオークフィールドホテルの専務執務室に顔を出した愛菓に、ルイとマサキヨシザキは土下座をして謝罪を示した。
「やめてください。殿方がそんなに簡単に女子に土下座をするものではありません」
ルイとヨシザキの腕をとって、立たせようとした愛菓を、不機嫌さマックスで和生が遮った。
「フランスはfeminismの国ですよ。女性に謝罪するなんて、挨拶するようなものだ」
「樫原専務っ!」
咎めるような愛菓の言葉にも、和生は動じず
「ええ、あなた方のしたことは騎士にあるまじき行為だ。正々堂々と行われるべき公式試合に私情を持ち込んだ上、嘘の情報で心理的に相手を追い込んだ。とても紳士がやることじゃない」
土下座したままの二人は、シュンと、頭を垂れたまま。
まるで裁きを受ける下手人のようで愛菓は笑った。
「まあ、そんな妨害にも負けず、愛菓さんはその類稀なる侍精神で試合に打ち勝ち、日本に残ることを決めた。あなた方の完敗ですね」
「仰る通りだ。愛菓のスイーツタワーを見て、私も初心に返ることができたよ。皇子が私の作ったアレルゲンフリーのスイーツに心を奪われなかったのは、私の下心が透けて見えたからだろう。ルイのしたことも私を勝たせたいという思いの強さから来たものだ。罰するなら私だけにして欲しい」
愛菓は、二人の前にしゃがみこむと、
「誰が誰を罰するのですか?皇子に美味しいスイーツを食べさせたかったという吉崎さんの気持ちは本物でしょう?それでいいのではないですか」
「では、私だけでも罪を負います。パティシエとして今後活動を自粛することも辞さない」
ルイの必死の言葉に、愛菓は微笑んで首を振る。
「和生を信じきれなかった私の弱さです。漬け込まれて当然です」
愛菓の心からの微笑みに、ルイが見とれて固まった。
クールなパティシエールの異名はどこへやら。
和生の愛情を信じることができた愛菓は、心からの笑顔を手に入れ、更に魅力を増していた。
「愛菓、それ以上、そいつに近づくな」
和生が慌てて、愛菓を立ち上がらせると、グイっと自分に引き寄せた。
「もういいでしょう?用事は済んだはずだ。お二人ともさっさとフランスへお帰りください」
絶対零度の冷たさで牽制する和生に、吉崎もルイも苦笑しながら立ち上がった。
「愛菓さん。来年、アレクサンドル皇子とアリス皇女があなたをフランスへ招待すると言っています。もちろん、バケーションとしてです。費用は一切彼ら持ちです。私達がしたことは別として、この心からのお誘い、受けてはいただけませんか?」
「本当ですか?留学でも引き抜きでもないのなら、是非遊びに行かせてください。和生、いいでしょう?」
キラキラとした愛菓の瞳に、和生は反論することはできない。
まるで忠犬、主人を信頼することを覚え始めた子犬のような愛菓に、和生も毒気を抜かれてしまうのだ。
「仕方ありませんね。私も休みを合わせて付き合いましょう」
「いえ、樫原専務は呼ばれておりませんので」
「私が、愛菓一人をフランスにやるとでも?彼女を嵌めた人物のいる敵国に?」
和生の言葉に、吉崎もルイも肩をすくめて笑った。
「次に会うときは夫として愛菓をエスコートしていきますのでよろしくお願いします」
「oui!クロカンブッシュとマカロンタワーを準備してお二人をお迎えしますよ」
そう言って、吉崎とルイは笑顔で専務執務室を後にした。
翌日、和生と共にオークフィールドホテルの専務執務室に顔を出した愛菓に、ルイとマサキヨシザキは土下座をして謝罪を示した。
「やめてください。殿方がそんなに簡単に女子に土下座をするものではありません」
ルイとヨシザキの腕をとって、立たせようとした愛菓を、不機嫌さマックスで和生が遮った。
「フランスはfeminismの国ですよ。女性に謝罪するなんて、挨拶するようなものだ」
「樫原専務っ!」
咎めるような愛菓の言葉にも、和生は動じず
「ええ、あなた方のしたことは騎士にあるまじき行為だ。正々堂々と行われるべき公式試合に私情を持ち込んだ上、嘘の情報で心理的に相手を追い込んだ。とても紳士がやることじゃない」
土下座したままの二人は、シュンと、頭を垂れたまま。
まるで裁きを受ける下手人のようで愛菓は笑った。
「まあ、そんな妨害にも負けず、愛菓さんはその類稀なる侍精神で試合に打ち勝ち、日本に残ることを決めた。あなた方の完敗ですね」
「仰る通りだ。愛菓のスイーツタワーを見て、私も初心に返ることができたよ。皇子が私の作ったアレルゲンフリーのスイーツに心を奪われなかったのは、私の下心が透けて見えたからだろう。ルイのしたことも私を勝たせたいという思いの強さから来たものだ。罰するなら私だけにして欲しい」
愛菓は、二人の前にしゃがみこむと、
「誰が誰を罰するのですか?皇子に美味しいスイーツを食べさせたかったという吉崎さんの気持ちは本物でしょう?それでいいのではないですか」
「では、私だけでも罪を負います。パティシエとして今後活動を自粛することも辞さない」
ルイの必死の言葉に、愛菓は微笑んで首を振る。
「和生を信じきれなかった私の弱さです。漬け込まれて当然です」
愛菓の心からの微笑みに、ルイが見とれて固まった。
クールなパティシエールの異名はどこへやら。
和生の愛情を信じることができた愛菓は、心からの笑顔を手に入れ、更に魅力を増していた。
「愛菓、それ以上、そいつに近づくな」
和生が慌てて、愛菓を立ち上がらせると、グイっと自分に引き寄せた。
「もういいでしょう?用事は済んだはずだ。お二人ともさっさとフランスへお帰りください」
絶対零度の冷たさで牽制する和生に、吉崎もルイも苦笑しながら立ち上がった。
「愛菓さん。来年、アレクサンドル皇子とアリス皇女があなたをフランスへ招待すると言っています。もちろん、バケーションとしてです。費用は一切彼ら持ちです。私達がしたことは別として、この心からのお誘い、受けてはいただけませんか?」
「本当ですか?留学でも引き抜きでもないのなら、是非遊びに行かせてください。和生、いいでしょう?」
キラキラとした愛菓の瞳に、和生は反論することはできない。
まるで忠犬、主人を信頼することを覚え始めた子犬のような愛菓に、和生も毒気を抜かれてしまうのだ。
「仕方ありませんね。私も休みを合わせて付き合いましょう」
「いえ、樫原専務は呼ばれておりませんので」
「私が、愛菓一人をフランスにやるとでも?彼女を嵌めた人物のいる敵国に?」
和生の言葉に、吉崎もルイも肩をすくめて笑った。
「次に会うときは夫として愛菓をエスコートしていきますのでよろしくお願いします」
「oui!クロカンブッシュとマカロンタワーを準備してお二人をお迎えしますよ」
そう言って、吉崎とルイは笑顔で専務執務室を後にした。