白と黒ゲーム
「純ッ!純ッ!純ッ!!!」
私はガラスケースの正面で必死に名前を呼びながら何度もガラスケースを叩いた。
純は何か言っている様子だったが、ガラスが凄い厚みのせいか、音が届いていなかった。
「純!出てきて!んん!....かった...」
玲美はガラスケースの引き手を開けようとするが、ビクともしなかった。慌てて勝治が入れ替わり、全体重を使って引き開けようとしたが、物音すらしなかった。
「どけぇぇぇぇぇ!!!」
野太い咆哮が聞こえ、そちらを振り向くと元道が猛突進してこちらへきた。
私は急いでそこから離れ、元道のショルダータックルを見守った。
ガンッ!と手応えのありそうな音が聞こえるが、ガラスケースは傷すらつかず、逆に元道の肘から血が出てきていた。
「げ、元道君!大丈夫!?」
「....あぁ...くっそ!おい純お前!こんなとこで死ぬんじゃねぇ!!俺との勝負から逃げんのかこの野郎!!」
元道は怒鳴りながら何度もガラスケースを殴っていた。拳に血が付着する程、元道が殴ってもガラスケースは壊れない。ガラスドアの取っ手もビクともしない。
私は堪えていた涙が溢れる。悲しさというより絶望の涙。どうしようもない現実があまりにも苦しく辛かった。