白と黒ゲーム

私は朝、自分は強く生まれ変わったと思っていた。純の死を乗り越え、悲しみを背負い、今までとは違う自分になったと。
だが、事実は違ったというのを今、嫌という程実感させられていた。

自分という人間の本質は、恩人さえ道具にして目的を達成しようとするクズであり、強くなったと勘違いする頭がめでたい人間。
この状況を止める力は当然ない、寧ろこの状況を招いたのは自分自身。

そう思えば思うほど、私の中に住まう黒い何かが大きくなっていく。吐き尽くしたと思うほど吐いたのに、それを無視するかのような急成長。

私は膝を曲げてその場で手を口に抑えながら座り込んでしまった。嗚咽が出てきて、強烈な吐き気に襲われる。



「あ、杏!!大丈夫か!!」


勝治は視界端で弱った私を見れたのか、殴る手を止め、立飛達の手を振りほどいて私の元へ駆けつける。
私は精一杯の力で勝治の胸元を掴み、吐き気を堪えながら喋った。


「元道君は...悪くないの....ごめんなさい...私のせいで....私は弱い人間なの....ごめんなさい...ごめんなさい....ごめんなさい...」


私は必死に謝った。何に対して謝っているのか、今の私には明確な理由は思いついてなかった。ただ、謝らずにはいられなかった。


"キーンコーンカーンコーン!!
セーフティータイム終了となりました。"
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