白と黒ゲーム


美智が緊張気味に言うと、安堵していたクラスメイトの顔が少しだけ険しくなる。ここが大きな分岐点。純の命運を握っていると言っても過言ではないのだ。


美智を先頭に央土がいるであろう二階の部屋へ向けてクラスメイト達がゾロゾロと大部屋を抜けていく。
私はクラスメイトを推し抜きながら、先頭辺にいた純の傍まで急いで駆け寄る。傍にいたい、傍にいなければならない、そんな使命感を私は感じていた。


「はぁ....はぁ...じゅ」


私は声をかけようとすると、純は大量の汗を流していた。ブルブルと小刻みに震わし、顔も険しくしている。純もこの先央土が死体として見つかった場合、どんな状況になるか理解しているようだった。

そんな行く先一点しか見つめていなかった純が私に気付き、苦笑いをした。


「どうした杏?俺は大丈夫だよ。」


まだ私は何も言ってもいないのに"大丈夫"だと純は口にした。そして苦笑い、自然に微笑むことが出来ていない。
私はどれだけ純が精神的に追い詰められ、苦しんでいるのかすぐに理解し、辛くなる。



こうなってるのは私のせいだ....私があの時、手当しようなんて言わなかったら...こんなことにならずにすんだのに....


私は数時間前に流していた涙がまた出そうになるのを堪えながら、純の冷たい手を両手で握った。
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