欠けてるあなたが大好きです。

「みっふゆちゃーん!」


ショウキさんばりの爽やか笑顔で

つづるさんがやってくる。



注文が入ったのかな?




「なんですか?」


「お客様にサービスしてあげて?」



「サービス…?」


「自己紹介したり、おしゃべりしたり、

 …あとはあ〜ん♡してあげたり?」


先程の爽やか笑顔は

このからかいをするためだったのか…。



今はにやにや笑ってる。





「美冬ちゃん、あ〜んしてくれるの!?」


「あ、えと…。」


なんて言うのが正解?


フウくんに接客時のこと聞いておけばよかった!



誰かコミュ力を分けて!!







「あはは、ごめんね。

 意地悪しちゃった。ね、てんちょーさん?」



「伊藤さんも人が悪いなぁ。

 わかってて乗ってきたでしょ?」


お客さんとつづるさんが楽しそうに笑っている。




からかわれただけみたい。





ふぅーっと安心して息を吐く。


「んじゃ伊藤さんたちの相手してね〜。」


つづるさんは初めて見る女性客のもとへ

ふらふら〜っと行く。




相手ってなにしたらいいんだろう…?



わたしはここのスタッフと話すときも、

いつも話題をふってもらっていた。



だって何話していいかわかんないんだもん。





うーーーっと何を話すか考えると、

伊藤さんと呼ばれてた人が口を開く。






「美冬ちゃんはいくつ?」


「16歳の高校2年生です。」



「わぁ〜、若いね!

 僕は伊藤仁誠(いとうじんせい)

 こう見えててんちょーさんと同い年。

 連れがミユミユのファンでよく来るんだ。」


「そーなんですね〜。」



つづるさんと同い年には正直見えない伊藤さん。


つづるさんの年齢は知らないけど、

30歳前後に見える。



でも伊藤さんは40代くらいのそれなりのおじさん。


身なりは綺麗だし親切そうなおじさんって感じだけど。




「ぼ、僕は平山育生(ひらやまいくお)…。」


ぼそっと名乗ってくれる平山さん。



この人は小太りでめがねをしてて、

ちょっと衛生的に近づきたくない人。



確かに外は7月になったしすごく暑いけど、

来店してからだいぶ経っているはずなのに汗ダラダラ。


エアコンちゃんと効いてて涼しいのになぁ。







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