欠けてるあなたが大好きです。
「いや逆だよ。とってもおいしい!」
「…ほんとですか?」
「ほんとほんと。
ショウキくんのは洗練されてて
計算されまくったおいしさだけど、
これは優しくて食べてて幸せになれる感じ!」
「…下手ってことですか。」
どう聞いても頑張って褒めました感が否めない。
ぷくぅーっと頬をふくらませてみる。
数秒後、2人の顔が紅く染まる。
「…違うよ。
ほんとにこれは幸せになれる味がするんだ。」
少し照れたように言う伊藤さん。
なんで照れてるんだろう?
不思議に思っていると、他のお客さんに呼ばれる。
「なんですか?」
「今のはわざとですか?」
「…どれのことですか?」
なんですか?って言っただけなんだけど…。
「田中氏、これは神降臨的展開ですね。」
「うむ。これは期間限定では惜しすぎる逸材。」
???
何かこそこそ話しているけど、
あんまり聞こえなくて首を傾げる。
わたしに用事があったんじゃないのかな?
「美冬ー。オムライス小お願いー。」
フウくんからゆる〜い注文が入る。
「はい!
すみません、失礼しますね。」
男性3人組からそっと離れようとするが、
その内1人が叫ぶように聞いてきた。
「もしかして美冬ちゃんが作るの!?」
「え?はい、そうです。
料理スタッフが足りないから
臨時でバイトすることになったので…。」
そう言いながら
厨房に向かおうと少しずつ離れていく。
お待たせするのは悪いもんね。