欠けてるあなたが大好きです。
数分後…。
「ごめん諒くん、お待たせっ!」
まだネクタイとエプロンはつけていないけど、
最低限着用したところで声をかけた。
なぜならとっくに布と布がこすれる音が
背後からしなくなっていたから。
こちらを向いた諒くん…もといフウくんと目が合う。
「んじゃ咲雪、中入るぞ。」
こくんと頷いて見せると、
フウくんがライトグレーのドアを開けて入っていく。
「おー!
風越きゅんじゃ〜ん!」
そんな声を耳にしながら、
フウくんの後ろをついていく。
あれ?なんだか甘いにおいがする…?
においの原因を探ろうと思ったけど、
わたしは女子の中でも小柄だから、
背の高いフウくんの後ろからだと
フウくんのシャツしか見えない。
ひょこっと顔を覗かせてみると、
厨房にきらきら輝く頭の男の人がいた。
あ、はげてらっしゃるわけじゃないよ。
金髪より色が薄くて、かと言って白髪ではない…。
あ、わかった!
銀髪って言えばいいんだ!