欠けてるあなたが大好きです。
「スライダー乗りたい!」
「りょーかい。」
流れるプールから出てぺたぺた裸足で歩き、
2人乗り用のスライダーの列に並ぶ。
「ん。」
「え…?」
列に並んだ途端、諒くんが手を差し出してきた。
「どうして?」
「オレ、咲雪と手繋ぐの…気に入ったから。
オレがしたいならいいんでしょ?」
手繋ぐのを"好き"、とも"嫌いじゃない"、とも
言わない辺り、本心を言っているようだった。
気に入るのと好きは
何が違うのかイマイチわかんないけど。
諒くんなりにニセモノな言葉を
使わないようにしたんだろうな。
「わーい!」
わざとらしく声を上げて手を重ねる。
おしゃべりをしていたらすぐに時間が経って、
スライダーの順番がまわってくる。
前後の2人乗りのものなんだけど、
前に子柄な人や子どもが乗らないと
バランスが取れないらしく、
わたしが前、諒くんが後ろに座る。
諒くんのことが見えないの、ちょっと不安かも。
「いってらっしゃ〜い。」
スタッフさんが勢いをつけて
スライダー用の浮き輪を滑らせる。
「ひゃぁっ!」
思ったよりもスピードが一気に上がり、
声を出してしまった。
「何?咲雪怖いの?」
「お、思ったより早くて!」
後ろから笑い声が聞こえる。
「なんで笑ってんの!」
「怖がってる咲雪がかわいくて。」
「はぁ!?」
絶対おもしろがってんじゃん!
今日初のスライダーは
諒くんの笑い声とともに終了した。