欠けてるあなたが大好きです。
「咲雪、帰ろうぜ。」
「…疑ってくるくせに。」
「まだすねてんのか?」
「…。」
別にすねてなんかないもん。
無言で教室を出る。
「みんなおつ〜!
明日もよろしくなっ!」
諒くんはみんなに叫ぶように言ってから
わたしを追ってくる。
勝手に隣に並んで、
わたしの歩くペースに合わせて歩いてくれる。
お互い無言のまま玄関で靴を替え、
駅に向かって歩く。
「咲雪。」
「…なに。」
「手、繋いでいいのか?」
「…なんで聞くの。」
「だってまばらとはいえ
学校の人前にも後ろにも歩いてるし。」
「…諒くんが繋ぎたいなら繋げば。」
ほんとは繋いでほしいくせに。
かわいくない言い方になってしまって少し後悔。
こんな言い方でも
諒くんには本音が伝わってしまうのか、
しっかりと手が繋がれる。
「…ありがと。」
「ん?どーいたしまして?」
諒くんはにっと笑ってくれた。
雑談をしながら歩き、駅について電車に乗る。
「咲雪とオレがシフトかぶるのいつ?」
「えっとねー。」
スマホのカレンダーアプリを開く。
「明後日の午前中かな?
10時から1時。
まったく同じタイミングだね。」
「その日の午後、なんかある?」
「なんにも。」
「デート行こうぜ。」
「えっ!?」
諒くんから誘ってくれるとは思ってなかった。
デートしてみたいなぁとは思ってたけど、
誘う勇気も持ち合わせてないし、
誘い方もわかんないしで諦めていた。
「…嬉しい。」
「そんなにオレといられるの嬉しいんだ?」
にやにやと煽ってくる諒くん。
「うん。
諒くんといられるの幸せだもん。」
あえて笑顔で本音を言ってみた。
諒くんは予想していた反応じゃなかったからか、
無表情になってしまった。
「あははっ!
珍しくわたしが勝った!」
「…なんか不満だ。」
「あ、降りるね!
また明後日に!」
「あぁ。またな。」
諒くんにばいばいしてからおうちに帰った。