欠けてるあなたが大好きです。

「あいつら相手ならまだまだ聞くところだけど、

 感情を引き出すための質問だから

 咲雪ちゃんにはもういいか。」


そう言って紙を次のページに変えるつづるさん。



感情を引き出す…か。


頭ではわかっているのに、

どうしても引っかかって言葉が残る。



つづるさんがボールペンで紙に

何かを書いてから、口を開く。




「次は質問っていうよりクイズね。

 今からこの紙に書いたことを

 思い浮かべるから、

 俺がどんな感情を抱いてるかあてて!」




ガチャッ。


「あ、いた。

 ってなんで2人して座ってんの?

 準備してるのかと思ってた。」


「諒くん!」



「ちょうどいーや。

 フウくんもやってよ。」


「なにをっすか?」



「定例会の感情あてクイズ。」


「あぁ。いいっすよ。」



「フウくんは咲雪ちゃんが答えた後に答えてね。

 じゃあ改めて〜

 今の俺はどんな感情を胸に秘めてるでしょーか!」



じっとつづるさんの顔を見て、感情を探る。



…いつもと違うとこあるかな?


頑張って見分けようとするけど、

まったく違いがわからない。




「…わかんない。」


「じゃあ解答権はフウくんに移りまーす。」



「悲しい…いや、うらやましいってとこか?

 目が少しいつもより伏せ気味だし、

 頬に少し力が入ってる。」



「ひゅ〜。おっそろしぃ〜。」


つづるさんが見せてくれた紙には

咲雪ちゃんに対する嫉妬と書かれていた。




「なんでわかるんだ…?

 ってゆーか嫉妬…!?」



「だってこんなにサイコと関わってんのに

 サイコ化しないなんて嫉妬しちゃうよね〜。

 大体おんなじ状況なのにさ〜。」


軽い口調で言ってるけど、

なかなかに衝撃的な発言だ。



確かにわたしは

Lead Sのみんなと関わったからって

感情に乏しくなったり

合理主義な考え方をするようになったりしてない。




あ、うそ。


ちょっとだけあるかも?



諒くんと一緒にいたい、って気持ちに対しては

自分中心で考えちゃってる。


諒くんの気持ちとか、

周りの人がどう思うかとか

考えられなくなっちゃう。





あれ…?


これってむしろ感情的になってる…?




Lead Sと出会ってからの変化を

もんもんと考えながら開店準備を手伝い、

バイトの時間になる。



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