欠けてるあなたが大好きです。

わたしがパンケーキを3分の1くらい食べたところで、

イブさんが本題を切り出してきた。




「咲雪ちゃんのとこの文化祭、

 俺どーやって行こう?」



「…えっと?」


「俺こー見えて有名人じゃん?

 だから文化祭なんて若い子が多いとこ行ったら

 騒ぎになっちゃうじゃん?」


まぁ俺イケメンだから仕方ないけどさ!と

ナルシストっぽい笑みを浮かべて続ける。




「それに人気投票みたいのあるんでしょ〜?

 俺が来たってだけでチートになっちゃいそー!」




…この人どれだけ自分に自信があるんだろ。



確かに有名かもしれないけど、

目立つのはその頭の色のせいだと思うんだ。



銀色の髪でピアスをたくさんつけたイケメンって

そうそういないから、

顔をしっかり覚えてない人でも気づけてしまう。


だからこそ人に囲まれやすいのでは…?




「1日だけ髪を染めるか、

 ウィッグでもかぶったらどうですか?」


「それでもイケメンだから騒がれちゃうよ〜!」



うーん。


困ったなぁ。



パンケーキを口に含んで気分を上げる。




「ショウキさんにはなんて言われましたか?」




「あーー、えっとね〜、意訳すると

 黙れこの自意識過剰。さっさと女に刺されて死ね。

 だったかなぁ…。」


遠い目をしているイブさん。



ショウキさんもそんなこと言うんだ…。



でも仕方ない気がする。


だって質問という名の自慢だよね、これ。


俺有名でイケメンだからって言いたいだけだもん。




パンケーキの最後の一口を食べ、口を拭く。




「そのきれいな銀髪を隠したら

 イブさんとはわかりにくくなるので、

 染めるかウィッグをかぶるかを推奨します。」



「でも俺…。」


「大丈夫です。

 フウくんだっていますし、

 イブさんとただのイケメンでは影響力が違います。」


わざとかぶせるように言う。



ちょっと強めの口調になっちゃったけど、

イブさん相手なんだし、いいよね?




「じゃあ当日は黒に染めて行くね〜。

 フウくんより正統派イケメンになってやる!」



「そ、そうですか…。」




諒くん相手に正統派イケメンの勝負って…。



もともと目つきがよろしくないから諒くんのが不利だよね。



正統派イケメン勝負ならショウキさんとしてほしい。


絶対にショウキさんが勝つけど。




「よしっ!もうミッションクリアでいいよね!」


「ミッション?」



「あー、言っちゃだめらしいから言わな〜い☆

 知りたかったら津々留に聞いて〜!」


ぱちっとウィンクしてくる。


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