欠けてるあなたが大好きです。
なんか左手をかばってるように見えるのは気のせい…?
「休憩ってあと何分…?」
「え?…あと3分40秒くらい。
…ってどこ行くの?」
明日香ちゃんの返事を聞き終える前に
体が動き始めていた。
「下行ってくる!」
2階から見ていたから、急いで下の階に降りる。
「諒くん!」
短い距離のはずなのに焦る気持ちが強くて息がきれそう。
「どうしたんだよ。
直々に応援してくれるのか?」
「左手…怪我してるの?」
作った笑顔を見せていた諒くんが、
無表情になってわたしのことを疑うような、
分析するような目つきに変わる。
「…何のこと?」
「かばってるでしょ…?
諒くんほどバスケ上手い人が
右手だけでドリブルし続けるわけないもん。」
「…なんで気付くかなぁ。
言っとくけど、オレ、後半も出るから。」
「なんで!?
悪化しちゃうかもしれないじゃん!」
「別に言うほど酷くないし。
それに咲雪に勝ってねって言われたしな。」
「馬鹿なの…?
諒くんが怪我するほうが嫌だよ…。」
ビーーーッ。
休憩時間の終了を告げる音が響く。
「…行ってくる。」
「なんで…!」
「大丈夫だから。応援しといて。」
諒くんはコートの方に行ってしまった。
怪我が酷くならないことを願って
琉奈ちゃん達のもとへ戻る。
「おかえりー。何してたの?」
「…何でもない。」
もう後半も始まっちゃったし、
言っても無駄な気がして何も言わなかった。