欠けてるあなたが大好きです。
明日香ちゃんに
残り1分きったから見なさい!
と言われてやっと立ち上がる。
点数は28対28。
先輩チームがボールを持っている。
時間的にシュートを決められたら
勝ちはなくなってしまうだろう。
大ちゃん先輩が諒くんを目の前にしてシュートしようとする。
…ができなかった。
諒くんの左手がちょうどシュートコースに入っていて、
ばしっと弾かれた。
痛そう…。
珍しく表情が崩れて辛そうな顔の諒くん。
だからやめておけばよかったのに!
弾かれたボールは朔くんの手に。
残り30秒をきった。
コート上の10人が一気に全速力で動き出す。
でも朔くんと諒くんしか
シュートを決めるべきゴール側のハーフコートにいない。
このまま行けば決めれる!と思ったのに、
大ちゃん先輩がものすごいスピードで
ゴール下に戻ってきた。
2対1。
でもバスケ歴も年齢も上の先輩だから、
人数の差は大きなアドバンテージにはならない。
朔くんと諒くんがパスをし合って翻弄しようとする。
でもなかなか振り切れない。
残り10秒。
周りのみんながカウントダウンを始める中、
大ちゃん先輩が仕掛けた。
諒くんの手に収まったボールを
無理矢理奪おうとしたのだ。
でも瞬発力のある諒くんはドリブルで回避。
そしてそのまま流れるようにシュートを放つ。
ビーーーッ。
試合終了の合図が鳴る。
審判をやっていた体育の先生が、
2本指を立てた手を上から下に下ろした。
30対28。
…優勝しちゃった。
本当に勝っちゃった。
「30対28で2年A組の勝ち!
ありがとうございました!」
整列して礼をしてから、
まっすぐにわたしの方を見る諒くん。
「ダサくなかっただろ?」
…キメ顔はずるいよ。
「ほら、行っといで!」
琉奈ちゃん明日香ちゃんに背中を押されて、
というか叩かれて下の階へ向かう。