欠けてるあなたが大好きです。
「あのね…?
このミートソースパスタ、
ケチャップとソースの奥になにかの味がして…
それが何か気になって考えてたの。」
「「奥??」」
つづるさんとフウくんがハモる。
おふたりともなんのことだかわからないらしい。
「すごいですね、咲雪さん。
今までで気づいた人いませんよ。」
ショウキさんだけがにこにこしていた。
「隠し味にしょうゆを使用しています。」
「「は?」」
つづるさんとフウくんが再びハモる。
「俺そんなの聞いてないよ?店長なのに…!」
「言ってませんから。
それに気づいてなかったんですし、
問題ないですよね?」
爽やかな笑顔を1mmも崩さないショウキさん。
やりとりを聞きながら、
わたしは黙々とパスタを食べる。
「なーんかショウキさんの料理は
つづるさんのよりうまい気がしてたけど、
隠し味使ってたんすね。」
「でもあくまで隠し味ですし、
他の調理はつづると全く同じです。
そんなに変わらないと思いますよ。」
「ショウキはなんで教えてくれないのさ!
俺店長!えらいの!
だから全部知っておく必要がある!」
「うわー。つづるさん幼児退行っすか?
いい年の大人がそれやるときもいっすよ。」
「さすがに僕でも
フォローしかねるきもさですね。」
「ふたりしてひどい!」
「も〜、みんなうるさいっ。
裏にまで聞こえてるよ?」
先程つづるさんとフウくんが出てきた
目立たないドアから、男の人が出てきた。
「ってお客さんいるじゃん!
お客さんの前でけんか…?
ボクドン引きしちゃう〜。」
右手で口元を隠すようにして眉を下げている。
あずき色のウェーブがついたふわふわの髪。
髪を伸ばしたら女の子と間違えられそうな
中性的なかわいらしい顔立ち。