欠けてるあなたが大好きです。

諒くんは目を合わせたまま、言葉をつむぐ。




「いちごの天使ってゆーのは、咲雪のこと。

 バスケ部だけじゃなくて、運動部員なら

 全員知ってるあだ名みたいなもん。」




「…わたし!?

 そんな風に呼ばれたことないよ?」





「まぁ本人にばれないようにしてるっぽかったし。」






「さーゆー!」



試合が終わったみたいで、

水筒とタオルを持って琉奈ちゃんが走ってくる。





「ま、詳しいことは瀧田に聞けば?

 オレ運動部じゃねーし。」


「ん?なんの話?」


「いちごの天使の話。」




「はぁー!?

 さゆに言っちゃったの!?」


「あ、やっぱダメだった?わりぃな。」


ため息をつく琉奈ちゃんに軽く謝る諒くん。




次は男子の試合だから、

諒くんが何事もなかったかのように

コートに行こうとする。




「諒くん!」


「んー?」


「結局キャプテンさんに言われたこと

 聞けてない!」




いちごの天使の話にいつの間にか

すりかわってたけど、わたしは忘れてなかった。




『大ちゃん先輩が言ってた意味が

 わかったってだけー。』


何を言われたのか気になるんだもん。




いちごの天使といい、

わたしのことのはずなのに

わたしが知らないなんてやだ。




周りの目が気になるのはみんなそうでしょ?



「あとでなー。」


いつかのように右手をひらひらしながら

コートに行く諒くん。



先輩からビブスを渡され、

Tシャツの上から着る。





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