欠けてるあなたが大好きです。

「さゆ。風越に何言われた?」



「いちごの天使がわたしのことみたいで、

 運動部員ならみんなわかるあだ名…?」





「はぁ…。風越のヤツやってくれたなぁ…。」


またため息をつく琉奈ちゃん。


幸せいっぱい逃げちゃうよ…。





「まぁ知っちゃったなら仕方ないよね。

 私が教えてあげる。」



こう前置きして琉奈ちゃんはいちごの天使、

もといわたしのことを教えてくれた。



「まずいちごの天使ってゆーのの由来。

 さゆは外見も中身も

 理想の女の子って感じじゃん?」


「待って。既におかしいよ。

 わたし普通だよ…?」




「さゆに自覚ないのは知ってるー。

 でもね、さゆはモデルとかに

 なれるくらいの容姿を持ってるの。」


「だからそんなこ「そんでもって

 謙虚で優しくて相手のこと気遣えるじゃん?」



「………。」


琉奈ちゃんに遮られた…。



そんなことないのに…!





「だから天使って呼ばれるわけ。」



「そんなことないけど…。

 とりあえずそういうことにしておく。」





「いちごは…さゆ思い当たるでしょ。

 差し入れするとき

 だいたいいちご味のやつあるから。」



「だっていちごおいしいじゃん…!

 色もピンクとかでかわいいのができるし…!

 いちごほどかわいくておいしくて

 最高なものはない!」





「そーゆーわけで

 いちごの天使って呼ばれてるの。」


わたしの話は聞いてもらえないようだ。





「前に私に聞いてきた制汗剤大会だって、

 いちごの天使からの差し入れが

 欲しいが故のことだし。

 さゆがSNSにあげてる差し入れとか

 料理の写真にやたらいいねがつくのも

 いちごの天使のこと崇拝?してるからだし。

 ほんとかは知らないけど、男子の運動部部長は

 いちごの天使が差し入れをもってきてくれた

 回数を競ってるらしいし。」



なんかわたしの話なんだろうけど、

別人の話聞いてる気がしてきた。





「みんなが思ってるわたしっていうのは

 おかしいってことだけわかった。」



「…まぁさゆの中ではそーしておくのが

 いいと思うよ。事実だけど。」





水筒とタオルをわたしの座ってるイスの近くに

置いて、代わりにボールを持って去っていった。






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