欠けてるあなたが大好きです。

「咲雪!ちゃんと試合見ろよ!

 みんなのテンションだだ下がりなんだけど!」



既に始まっていた試合の中、

諒くんが少し息を荒げてわたしに向かって叫ぶ。



そして叫び終わったと思ったら

なぜか敵味方関係なく試合に出てる人に囲まれて

お説教をくらっている。




なにかしたのかな?



ルールはだいぶ覚えたけど、

良いプレーとかダメなプレーとかは全然わかんない。


きっとなにかいけないことをしたんだろうな。





今は蛍光色のビブスを着ている人がオフェンス。


5つのビブスが止まることなく動き回っている。




素早いパスでディフェンスを翻弄し、

諒くんがボールを持った。




ディフェンスの正面までドリブルで進んだ、

と思ったらくるんとドリブルしながら回転して

ディフェンスを抜く。




なにあれ!すごい!


ドリブルしながら進むのも難しいのに、

くるんってした!





そしてそのまま軽々と跳んでシュート!






「諒くんすごい!ナイシュー!」


つい叫んでしまった。



諒くんはちらっとわたしの方を一度みてから、

ビブスを着た先輩たちに話しかけた。



わざと大きな声で言ってるのか、

わたしにも聞こえる。





「いいんすか〜、先輩。

 いちごの天使ちゃんの声援、

 全部オレがもらっちゃいますよ〜?」



そして再び、ビブスを着てようと着てなかろうと

試合に出てる人に囲まれてぎゃーぎゃー言われてる。




断片的に聞こえてきたのは


『何言ってんだよ!?』


『天使ちゃんに聞こえちゃうじゃねーか!』


『俺が天使ちゃんに褒めてもらうんだ!!』


だった。




聞こえてますし、すごかったら褒めます。


だから恥ずかしいこと言わないでください…。



天使天使連呼しないで…。




自分のことだと知ってしまったがために

ものすごく恥ずかしい。





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