欠けてるあなたが大好きです。

「あれ?咲雪?」



後ろから声が聞こえて振り返ると、

男子バスケ部の集団の中に諒くんがいた。




「先輩わりぃ。オレ咲雪と帰るわ。」


そう言いながらわたしの隣に並ぶ。




「諒せこいぞ。」


「大ちゃん先輩、よく考えてみ?

 オレはバスケ部員じゃねーから

 一緒に帰る義務がねーの。

 だからなんも問題なし。」


そういうことじゃない!

と後ろから聞こえているが、

諒くんは何も反応しない。





「よかったの…?」



「いーのいーの。

 それに咲雪、聞きたいことあるんだろ?」


「話してくれるの?」


「あぁ。」




さっき聞いたときは

いちごの天使の話にすりかえたから、

てっきり話してくれないのかと思ってた。




「キャプテンさんが言ってた意味がわかったって

 どういうこと?」



「まぁ簡単に言えば、咲雪に褒められると

 やる気が出るってゆーことだな。」





「…?」



「覚えてるか知らねーけど、

 あのとき瀧田のピースに

 ピース仕返してたじゃん?」


「うん。」


「あれ試合中にやられたら

 めっちゃ疲れとびそうだなって

 思ったんだよ。」




「…どして?」



「だって咲雪かわいいじゃん。

 天使に笑顔でピースされたら

 癒やされるに決まってね?」


からかってるのかと顔を見たけど、

本人はいたって真面目な顔。




さらっとかわいいとか言えちゃうあたり、

きっと誰にでも言ってるんだろうな。




「お世辞はいりませんー。」


そう言ったところで改札につき、

ピッとICカードをかざして通る。




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