欠けてるあなたが大好きです。

結局わたし何もしてない気がする。


っていうかほんとに何もしてない。



前に来て諒くんを指名しただけ。





「じゃあ今度はクラス企画のテーマ決めなんだけど、

 何か意見ある奴いるー?」


黒板はそのままで朔くんが写してる間に

次の話に移る諒くん。





30秒くらい経っても誰も動かない。





「水谷どーぞー。」


手を挙げた水谷くんをあてる諒くん。



この水谷くんも実行委員になった1人で、

黒縁メガネをかけたひょろっとした男の子。



諒くんや朔くんのように目立つタイプではなく、

そんな水谷くんが挙手したことで

クラスメイトはざわざわしはじめる。




そしてなぜかあてられた水谷くんは前に出てくる。



「どうも、水谷です。

 今回は実行委員としてでしゃばらせていただきます。」


めがねをくいっとしながら話し始める。




「先程少し様子を見ましたが誰も意見がないようなので、

 わたくしから提案をさせていただきます。

 まず、形式は喫茶店系統をおすすめします。

 主な理由は中園さんがいるからです。」



「へっ?」 


急に名前が出てきて変な声を出してしまう。




水谷くんは一瞬こちらを見たが、話を続ける。




「そして、テーマはコスプレ系統を

 おすすめしたいと思います。

 中園さんや瀧田さん、風越くんなど

 顔面偏差値が高い人が多いですから、

 それを使わなきゃもったいないです。」



またわたしの名前…?


わたしそんなすごい人じゃないよ…?




「じゃあ形式は喫茶店、テーマはコスプレ系?でいいか?

 賛成の人きょーしゅ。」


諒くんの言葉に、前にいる人以外全員が手を上げる。





「つーかコンセプト全部

 水谷に任せていいと思う人きょーしゅ。」


誰も手を降ろさない。





「よかったな水谷。

 お前らこのクラス決まったときから企んでただろ?」



「さすが風越くん。

 我々のことまで把握してるとはさすがですな。」


どういうこと?


全然はなしがわからない。





「んじゃあと10分くらいで授業終わるし、

 今日はこれで終わりなー。」





こうして実行委員長になったはずのわたしは何もせず、

授業が終わったのだった。







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