君の隣で、色を見たいんだ
「へえ、料理!いつでも教えてあげるよ!特に君みたいにかわいいベッラにはね」

ロヴィーノの言葉に、みどりは苦笑しながら「Grazie mille(ありがとうございます)」と言う。みどりはイタリアに来てから、何度かナンパをされている。ラテン男は恐ろしいほど積極的だ。

「それで?何かあったの?」

ロヴィーノに再び訊ねられ、みどりは言うべきかどうか迷う。しかし、嘘をつく気にはなれなかった。みどりは口をゆっくりと開く。

「私は、美術や音楽は好きです。でも、こんなきれいな建物を見ていると虚しくなるんです。いつか全てなくなってしまうかもしれないのに、そう思ってしまうんです」

みどりの言葉に、ロヴィーノは少し考えたるような表情になる。それはそうだろう。ナンパ?をした女性の口からこんな重い言葉が出てくるのだから。

「美術は好きなんだよね?」

ロヴィーノがみどりを優しい目で見つめる。みどりは「si(はい)」と答える。

「僕も美術ーーー絵を描くことが好きなんだ」

そう言って、ロヴィーノはスケッチブックをみどりに見せた。
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