同じ人を好きになるなんて
そしてしっかりと繋いだ手は離さないと言わんばかりにぎゅっと強くなった。

びっくりして顔を上げると目が合う。

優しい目。

この目を私は覚えてる。

付き合う様になってしばらく経った頃、私たちの関係が噂となって広まった。

周りの私を見る冷ややかな目。話したこともない人からの妬みの混じった嫌味。

だけどそんな中、陸斗は私を守ってくれた。

「彼女を好きになったのは俺だ。もし彼女の悪口を言うなら俺に直接いってくれ」

私の手を優しく握り、私にだけ優しい目で見てくれた。

その時、彼と恋人になれたことに幸せを感じたし、この手を離さないで欲しいと思ったことを思い出したのだ。

「まゆり、行こうか」

愛おしそうに見つめる目に私はただ頷くことしかできなかった。
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