同じ人を好きになるなんて
私はためらいながらもソファに座った。

もちろん陸斗と距離をとって……だけどね。

だが、それが陸斗には気に食わなかったのかわざとらしくため息を吐きながら私との距離を詰めた。

「え?」

思わず声を出してしまった私に陸斗は不満げな様子で「こんなに離れてたら乾杯もできねーじゃん」と近づき、正当性を私に突きつけるもんだから何も言えなくなった。

「じゃあ乾杯しようか」

「う、うん」

二人でお酒を飲むなんて別れて以来だ。

といっても別れる数ヶ月前はすれ違いばかりで合えば喧嘩で、こんな穏やかな時間を過ごすことはなかった。

まさかこうやって二人きりでお酒を飲むんなんて五年前は想像もしていなかった。

「おつかれ」

「お疲れ様でした」

乾杯をしてキンキンに冷えたビールを飲む。

「相変わらずいい飲みっぷりだな」

「え?あ!……そうかな。自分ではよくわからない」

どう答えたらいいのか戸惑う。
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