同じ人を好きになるなんて
「理人……本当に楽しそうだったな〜」

陸斗は今日のことを思い出しながら何度も頷いている。

「いつも以上に楽しかったみたい。お風呂の中でも眠い目をこすりながら遠足が楽しかったって……三人で食べたお弁当が美味しかったっていってたよ」

「三人か〜」

陸斗は呟く。

きっと奥さんとのことを思い出してるんだろうな。

そりゃそうよね。本来ならりっくんと陸斗の隣にいるのは私ではなく奥さんなのだから。

そう思うと胸の奥をぎゅーっと締め付けられるような感覚に襲われる。

なぜ?

なんでこんな気持ちになるの?

私には関係ないことじゃない。

私は雇われてりっくんのお世話をしているだけ。

いつかはこの家を出る他人じゃない。

「まゆり?」

「え?な、何?」

「何を考えていた?」

不意に尋ねられ戸惑う。

三人と聞いて胸が苦しくなっただなんて言えるわけないし、言いたくもない。

「なんでもない。そ、それより缶ビールだけじゃ物足りないよね。なんか簡単なつまみでも作りましょう」

話題を変えるように立ち上がろうとした。

だが、それを拒むように陸斗が私の腕を掴んでいた。
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