同じ人を好きになるなんて
「いらない。つまみはいらないから座ってくれ」

「……はい」

どうしよう。私は顔に出てしまう性格だから……読まれた?

「今日は本当にありがとう」

「え?」

意外にも追及されなかったことに驚いた。

「男じゃフォローしきれないこともまゆりがいてくれるおかげでやっと普通の生活が送れるようになった。理人もまゆりが来る前と後じゃぜんぜん明るくなって本当に助かってる」

陸斗は持っていた缶ビールをテーブルに置くと改まって頭を下げた。

「そんな頭なんて下げないで。私は陸斗が思ってるほどすごくないよ。子育てだってぜんぜん未経験で行き当たりばったりで……りっくんにとってそれがいいのかわからない。手探り状態なのよ」

陸斗は否定するように首を横に振った。

「いや、まゆりは本当によくやってくれている。理人だって完全にまゆりをたよっている。だからこれからも……よろしく頼む」

これからも……といわれたが私は複雑な気持ちだった。

私はいつまでここで働くの?

いつまで働けばいいの?
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