同じ人を好きになるなんて
最初は元彼とその子供との生活に不安しかなかった。

でも一緒に過ごすうちに慣れというかむしろ楽しい。

でも、だからこそ不安なのだ。

このままズルズルとこんな生活を続けていいのか?知らないうちに本当の家族になった気になってしまうのではないか……。

「どうした?さっきから時々心ここに在らずみたいだが」

「え?ううん。なんでもない」

否定したものの、顔に出てしまう私を陸斗はよく知っていた。

「なんでもないって顔じゃない。こういう不安な顔を俺は何度もさせていたんだから」

このタイミングで過去を持ち出すなんてずるい。

それに本音が言える関係はとうに終わっている。

「本当になんでもないの。それに私も今日は疲れました。お先に失礼します」

これ以上一緒にいたら余計なことを言ってしまいそうで怖かった。

だがそれを拒むように陸斗が再び私の腕を掴んだ。

「陸斗?」

「頼む。なんでもいいから言ってくれ。じゃないと……」

陸斗の私を見る目が悲しそうだった。

なんでこんな目をするの?

なんでそんな辛そうに見るの?

胸が締め付けられるじゃない。

「もう!わかった」

私は再び腰を下ろした。
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